<遺言をする方法> |
一 |
遺言は誰でもできるのか(遺言能力) |
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遺言は、満15歳に達した人なら原則として誰でもすることができます(民法961条)。成年被後見人が遺言をする場合は、@事理を弁識する能力を一時回復したときにA医師2人以上の立会が必要です(民法973条1項)。被保佐人・被補助者が遺言するには、保佐人や補助人の同意は不要です。但し、被保佐人や被補助者が遺言をした当時遺言能力を欠いていれば、その遺言は無効になります。 |
二 |
遺言にはどんなことを書くか |
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遺言書に何を書こうと自由です。但し、遺言で法律上の効力を持つ民法の行為は下記表の10種類に限られます。 |
1 |
自筆証書遺言(民法968条) |
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自筆証書遺言は、遺言者自身の手で書き押印するだけで作成できるもっとも簡易な遺言方法です。証人の必要もありません。その反面、遺言書の偽造・変造・隠匿などの問題が生じる場合があります。また、遺言発見後に検認手続が必要で、要件を満たさない遺言書は無効となる可能性があります。※年月日のない遺言書は無効で、年月だけで日の記載のない場合も無効です。年月日ではなく、遺言者の「還暦の日」とか「何回目の誕生日」と書いたものでも遺言成立の日が確定できればよいとされていますが、やはり性格に年月日を記載するべきでしょう。※署名は戸籍上の氏名に限らず、遺言者が通常使用している雅号や芸名でも遺言者との同一性が認められれば有効です。修正・変更する場合は、修正・変更した場所に押印し、さらにその上部余白に修正・変更した個所と内容を付記し署名しなければなりません。この方式に従わなかった場合には、修正・変更がなかったものとして取り扱われることになります。 |
2 |
公正証書遺言(民法969条) |
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公正証書遺言は証人2人以上の立会いのもとに遺言書が公証人に対し遺言の趣旨を口述し公証人がこの口述を筆記します。 |
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長所−専門家である公証人が作成してくれる |
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保管が確実で安全 |
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検認手続が不要 |
A |
短所−遺言書の作成と内容を第三者に知られる |
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費用と手間がかかる |
3 |
秘密証書遺言(民法970条) |
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秘密証書遺言は、遺言の内容を遺言者以外に知られることなく作成できる遺言の方法です。 |
4 |
特別方式の遺言書の作り方 |
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病気その他の理由で死亡の危急に迫ったときの遺言は3人以上の証人が必要です(民法976条第1項前段)。証人の1人が遺言者の口述を筆記して、その場で読み上げまたは閲覧させ、各証人が内容を確認・承認したら署名・押印をします(民法976条第1項後段)。遺言者は、署名・押印する必要はありません。遺言の日から20日以内に家庭裁判所の確認を受ける必要があります(民法976条第4項)。検認手続も必要です。 |
A |
遭難した船の中で、死亡の危急に迫ったときの遺言は証人2人以上の立会いのもと口頭(または通訳人の通訳)で遺言できます(民法979条)。証人の1人が遺言者の口述を筆記し署名・押印します。しかし、その場で筆記する必要はなく読み上げも必要ありません。できるだけ早く、家庭裁判所の確認を受ける必要あります。検認手続も必要です。 |
B |
伝染病についての行政処分などで一般から隔離されている場合の遺言は警察官1人と証人1人以上の立会いが必要です(民法977条)。遺言者の口述を筆記するのは誰でもかまいません。その場で読み上げ承認されたら遺言者・筆者・立会人・証人の署名・押印が必要です。裁判書による確認は必要ありませんが検認は必要です。 |
C |
船の中で死亡の危急に迫った場合の遺言は船長または事務員1人と証人2人以上(乗務員・乗客でもよい)の立会いが必要です(民法978条)。やはり、遺言者・筆者・立会人・証人の署名・押印が必要です。裁判所による確認は必要ありませんが、検認は必要です。 |